建設業許可と電気工事業登録の違いを解説

建設業許可と電気工事業登録の違い

 この記事では、建設業許可電気工事業登録の違いについて説明します。

建設業許可とは?その必要性と取得方法

 まず、建設業許可とは、建設業を営む事業者が原則500万円以上の工事を請け負う際に必要となる行政庁の許可です。この500万円には消費税を含み、注文者が資材等を提供する場合には、その資材の市場価格や運送費も請負代金に含めて考えます。

 営業所が一つの都道府県内のみにある場合は都道府県知事の許可複数の都道府県にまたがる場合には国土交通大臣の許可が必要になります。あくまで営業所の所在地の場所によりますので、例えば愛知県知事の許可であっても東京都や大阪府の現場の建設工事も可能です。

 また、電気工事業を行う事業者も、500万円以上の建設工事をする場合には、登録電気工事業者の登録とは別に建設業許可を取得して行う必要があります。

 建設業許可の有効期間は5年間となっており、5年後も継続する場合には許可の更新手続きが必要となります。その他、届出事項に変更があった場合には変更届、毎年の決算後4ヶ月以内に事業年度終了届の提出が必要とります。

 建設業許可申請手続きの概要については、下記記事もご参照ください。

愛知県建設業許可申請の必要書類と手数料

愛知県建設業の許可申請と手続きについて  この記事では、愛知県で建設業を営業している事業者が、許可申請をする際の必要書類や手数料、その他注意点や手続きについて解…

電気工事業登録の概要

 一方電気工事業登録とは、請負金額に関わりなく、一般用電気工作物や自家用電気工作物に対する電気工事業を営む場合に必要となる登録です。建設業許可の一つの業種である「電気工事業」とは異なる制度です。

 愛知県内のみに営業所を設ける場合には愛知県知事への登録、複数の都道府県に営業所を設ける場合には経済産業大臣への登録(愛知県の場合は中部近畿産業保安監督部を経由)が必要です。

 電気工事業登録の有効期限は5年間であり、5年後も継続する場合には更新登録が必要です。

建設業許可と電気工事業登録のどちらを取得すべきか

 500万円以上の電気工事を施工する事業者は、建設業許可と電気工事業登録のどちらかで足りるのではなく、両方とも手続きが必要です。

 また、500万円に満たない電気工事を施工する場合でも、電気工事業登録は必要になります。

 ですので、両者は別の制度になりますが、建設業許可業者が新たに電気工事業に参入する場合には、みなし登録・みなし通知という手続きを行います。詳細は下記の新規登録手続きで解説します。

登録電気工事業者の新規登録手続き

登録に必要となる条件

 登録電気工事業者の登録に必要となる条件は、①営業所ごとの主任電気工事士の設置、②営業所ごとの器具類の備付です。

①主任電気工事士の設置

 まず営業所ごとに主任電気工事士を設置するという要件です。主任電気工事士と出来るものは、第一種電気工事士免状又は第二種電気工事士免状を持っている者です。

 第二種電気工事士免状の場合には、取得後一般用電気工作物等について3年以上の実務経験が必要です。実務経験は実務経験証明書という書類で証明します。

②器具類の備付

 次に営業所ごとに電気工事に必要となる器具類の備付が必要です。器具類は一般用電気工作物等のみの電気工事を行う場合と自家用電気工作物の電気工事をも行う場合で異なります。

(1)一般用電気工作物等

絶縁抵抗計、接地抵抗計、回路計

(2)自家用電気工作物

絶縁抵抗計、接地抵抗計、回路計、高圧検電器、低圧検電器、継電器試験装置(※)

絶縁耐力試験装置(※)

※継電器試験装置及び絶縁耐力試験装置については借用でも大丈夫です。

登録申請に必要となる書類

 登録申請に必要となる書類は、下記の通りです。

電気工事業者登録申請の必要書類

①登録電気工事業者登録申請書

②申請者に係る誓約書

③主任電気工事士に係る誓約書(申請者本人又は法人の役員がなる場合は不要)

④主任電気工事士の雇用証明書(申請者本人又は法人の役員がなる場合は不要)

⑤電気工事士等の免状の写し

⑥主任電気工事士等実務経験証明書(第一種の場合は不要)

⑦申請者の本人確認書類(個人事業主の場合、運転免許証等)

⑧申請者の登記事項証明書(法人の場合)

⑨電気工事業者カード

⑩申請手数料証紙貼付書

 ⑥の実務経験証明書は3年以上の実務経験を記載します。また、営業所が複数ある場合には、営業所ごとに③~⑥、⑨の書類が必要になります。

建設業許可業者のみなし登録・みなし通知

 建設業許可業者が新たに電気工事業を始める場合には、都道府県知事又は経済産業大臣に届け出なければならないとされています(みなし登録)。

 また、上記の事業者が自家用電気工作物のみに係る電気工事を営む場合には、都道府県知事又は経済産業大臣に通知して行います(みなし通知)。

愛知県の登録申請書の提出先、申請手数料

登録申請書の提出先

 愛知県に営業所を設けて電気工事業登録を行う場合の登録申請書の提出先は、営業所の所在地により下記の表の通りです。

営業所の所在地所管事務所住所
名古屋市、愛知県内の営業所が複数の所管事務所の管轄にまたがる場合防災安全局防災部
消防保安課 産業保安室
〒460-8501
名古屋市中区三の丸3-1-2
(愛知県本庁舎3階)
052-954-6199
豊橋市、豊川市、蒲郡市、田原市東三河総局防災安全課〒440-8515
豊橋市八町通5-4
(愛知県東三河総合庁舎2階)
0532-35-6119
新城市、設楽町、東栄町、豊根村東三河総局 新城設楽振興事務所 県民防災安全課〒441-1365
新城市字石名号20-1
(愛知県新城設楽総合庁舎2階)
0536-23-2114
一宮市、瀬戸市、春日井市、犬山市、江南市、小牧市、稲沢市、尾張旭市、岩倉市、豊明市、日進市、清須市、北名古屋市、長久手市、東郷町、豊山町、大口町、扶桑町尾張県民事務所 防災安全課〒460-8512
名古屋市中区三の丸2-6-1
(愛知県三の丸庁舎4階)
052-961-1519
津島市、愛西市、弥富市、あま市、大治町、蟹江町、飛島村海部県民事務所 県民防災安全課〒496-8531
津島市西柳原町1-14
(愛知県海部総合庁舎2階)
0567-24-2125
半田市、常滑市、東海市、大府市、知多市、阿久比町、東浦町、南知多町、美浜町、武豊町知多県民事務所 県民防災安全課〒475-8501
半田市出口町1-36
(愛知県知多総合庁舎2階)
0569-21-8111
岡崎市、碧南市、刈谷市、安城市、西尾市、知立市、高浜市、幸田町西三河県民事務所 防災安全課〒444-8551
岡崎市明大寺本町1-4
(愛知県西三河総合庁舎2階)
0564-27-2705
豊田市、みよし市西三河県民事務所 豊田加茂防災安全グループ〒471-8503
豊田市元城町4-45
(愛知県豊田加茂総合庁舎2階)
0565-32-7493
愛知県以外の中部近畿保安監督部管内にも営業所があるとき経済産業省 中部近畿産業保安監督部 電力安全課〒460-8510
名古屋市中区三の丸2-5-2
052-951-2817

申請手数料

 新規登録の手数料は22,000円です。愛知県収入証紙を購入し申請手数料証紙貼付書に貼付して納付します。

 建設業許可業者のみなし登録、みなし通知の場合には手数料はかかりません。

登録後に必要となる手続き

 電気工事業登録を完了後に必要になることがある手続きとしては、①変更届、②廃止届、③承継の届出、④更新登録があります。

①変更届

 登録事項に変更が生じた場合には、30日以内変更届を提出する必要があります。主な変更事項としては、下記の通りです。

変更届が必要な事項

・氏名又は名称

・住所又は本店所在地

・電気工事の種類

・営業所の名称

・営業所の所在場所

・営業所の増設・廃止

・主任電気工事士

・電気工事士免状の種類

・法人の代表者、役員

②廃止届

 登録電気工事業者が電気工事業を廃止したときは、廃止の日から30日以内に登録証と合わせて電気工事業廃止届出書を提出しなければいけません。

③承継の届出

 次のいずれかに該当したものは、30日以内に登録電気工事業者承継届出書を提出しなければなりません。

1.相続により電気工事業者の地位を承継したもの

2.譲受けにより電気工事業者の地位を承継したもの

3.法人の合併により電気工事業者の地位を承継したもの

4.法人の分割により電気工事業者の地位を承継したもの

 なお、地位を承継することにより、氏名又は名称、営業所の住所等の変更を伴う場合には、合わせて変更届の提出も必要となります。

④更新登録

 電気工事業登録の有効期間は5年となっており、5年後も引き続き電気工事業を営む場合には更新登録の手続きが必要です。概ね更新期限の1ヶ月前までには手続きをする必要があります。

 更新登録の前提として、登録事項に変更が生じている場合には変更届の提出が必要となります。また更新登録の手数料は12,000円となっており、愛知県収入証紙で納付します。

 電気工事業登録の詳細については、下記リンクもご参照ください。

登録電気工事業者の新規登録について

電気工事業登録のQ&A

第1種電気工事士と第2種電気工事士の試験に合格していますが、実務経験がありません。電気工事業登録の申請は可能でしょうか。

実務経験がないとその者を主任電気工事士として電気工事業登録の申請は出来ません。第1種でも第2種でも免状交付申請の際に3年以上の実務経験が必要です。ですので、実務経験を経てから免状を取得し、登録申請をする必要があります。

電気工事業登録をまだしていないのですが、建設業許可を取得することは出来るのでしょうか。

先行して建設業許可を取得することは可能です。その場合許可取得後、電気工事を施工する前にみなし登録又はみなし通知により登録電気工事業者の手続きをする必要があります。

電気工事業の業種で建設業許可を取得し、登録電気工事業者のみなし登録も済ませましたが、事務所に設置するのは建設業許可票だけで大丈夫でしょうか。

電気工事業の業務の適正化に関する法律の第25条により、電気工事業者は営業所及び電気工事の施工場所ごとに、氏名又は名称、登録番号等を記載した標識を掲げないといけないとされています。ですので、建設業許可票だけでなく、登録電気工事業者の標識の掲示も必要です。

まとめ

 建設業許可と電気工事業登録は別の制度であり、500万円以上の電気工事を施工するためには、両方の手続きが取られている必要があります。

 それぞれ有効期間は5年と定められていて延長するには更新が必要であり、申請事項や登録事項に変更が生じた場合にも、それぞれ変更届の提出が必要になります。

 申請が可能であるかの診断や申請手続きにご不安のある方は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。

 お問い合わせはこちらから:お問い合わせ - スタートアップ行政書士事務所 (start-up22.com)

投稿者プロフィール

start-up22
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【スタートアップ行政書士事務所 代表/行政書士】
佐野 太一(さの たいち)

2022年3月開業。愛知県あま市にて行政書士事務所を経営。
専門分野は建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可、補助金申請。