建築一式工事(建築工事業)の建設業許可取得要件について

建設業許可とは?基礎知識と特徴

 建設業とは、元請・下請を問わず建設工事の完成を請け負うことをいいます。建設業を営む場合に必ず建設業許可が必要となる訳ではなく、下記に該当するような軽微な建設工事のみを請け負う場合には、建設業許可は不要とされています。

建築一式工事(①、②いずれかに該当する場合)①1件の請負代金が1500万円(消費税を含む)未満の工事
②請負代金の額に関わらず、木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事
それ以外の建設工事1件の請負代金が500万円(消費税込み)未満の工事

 上記の請負代金の額は、工事を2つ以上に分割して請け負う場合でも正当な理由に基づいて契約を分割したのでない限り、その各契約の合計額で考えます。また、注文者が材料を提供する場合には、その市場価格や運送費を請負代金の額に加えた金額となります。

建設業許可を取得するメリット

 建設業許可を取得するメリットとしては、下記が挙げられます。

建設業許可取得のメリット

・500万円以上(建築一式工事は1,500万円)の建設工事を受けられるようになる。

・経営事項審査を受けて、公共工事を元請けとして受任出来る。

・融資の審査に通りやすくなる

・社会的な信用を得られる

・特定技能「建設業」で外国人を雇用できるようになる。

建設業許可の3つの取得要件

 建設業許可を取得するには、下記3つの取得要件を満たす必要があります。

(1)経営業務管理責任者要件

 建設業に関して5年の経営経験を有する者がいるという要件です。基本的に法人の場合は法人役員が、個人事業主の場合は個人事業主本人か支配人が要件を満たしている必要があります。経営経験は建設業以外の業種の経営経験を含みません。経営業務管理責任者は常勤の者である必要があります。

(2)専任技術者要件

 営業所毎に建設工事の施工に関する技術上の経験を有する「専任技術者」がいるという要件です。専任技術者となるための要件としては、①所定学科卒業後、3年又は5年の実務経験がある②10年以上の実務経験がある③1級2級資格等の国家資格や検定職種を取得していることのいずれかを満たす必要があります。

 専任技術者要件についての詳細は下記記事もご参照ください。

建設業許可の許可要件②ー専任技術者について

(3)財産要件

 また財産要件として、申請日直前決算で自己資本が500万円以上あるか、500万円以上の資金調達能力があることが必要です。500万円以上の資金調達能力は預金残高証明書で500万円以上の預金があることをもって証明書します。

 財産要件については、下記記事もご参照ください。

残高証明書取得の落とし穴?建設業許可「500万円」の真実

一般許可と特定許可の違い

 特定建設業許可とは、発注者から直接請け負った(元請工事)1件の建設工事につき、下請けに出す代金の合計額が税込4,500万円以上(建築一式工事業は7,000万円以上)となる場合に、元請業者に必要となる許可です。このような規模の工事を受注しない場合や下請としてだけ工事を請け負う場合には、一般建設業許可を取得する形になります。

 特定建設業許可の場合には、比較的規模の大きな建設工事に元請けとして関わることになるので、専任技術者要件や財産要件について一般許可よりも条件が厳しくなっています。

知事許可と大臣許可

 建設業許可には、都道府県知事の許可と国土交通大臣の許可があります。その違いは、営業所の所在地が一つの都道府県に留まるか、複数の都道府県にまたがるかの違いです。

 営業所が愛知県内のみにある場合ー愛知県知事許可

 愛知県内に主たる営業所を置き、他の都道府県にも営業所を置く場合ー国土交通大臣許可

 ここでゆう「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所を言います。単に作業場や連絡所に過ぎない場合には「営業所」には当たりません。各営業所には、専任技術者が常勤する必要があり、その営業所においては専任技術者が担当している建設工事の種類のみ行うことが出来ます。

建設業の29業種について

 また、建設業許可は建設工事の種類毎に取得する必要があります。この建設工事は、下表に掲げる29業種に分けられています。

1土木工事業9管工事業17塗装工事業25建具工事業
2建築工事業10タイル・れんが・ブロック工事業18防水工事業26水道施設工事業
3大工工事業11鋼構造物工事業19内装仕上工事業27消防施設工事業
4左官工事業12鉄筋工事業20機械器具設置工事業28清掃施設工事業
5とび・土工工事業13舗装工事業21熱絶縁工事業29解体工事業
6石工事業14しゅんせつ工事業22電気通信工事業
7屋根工事業15板金工事業23造園工事業
8電気工事業16ガラス工事業24さく井工事業

建築一式工事(建築工事業)とは:わかりやすく解説

建築一式工事の具体的内容

 そしてその建設工事の種類のうち、建築一式工事について説明します。平成29年11月10日国土交通省告示第1022号によると、建築工事一式の内容は下記の通りです。

建築一式工事     総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事

 建築一式工事は土木一式工事と並び、大規模又は施工が複雑な工事を原則として元請業者の立場で総合的にマネジメントする事業者向けの業種です。

 建築一式工事は、必ずしも複数の専門工事の組み合わせである必要はありませんが、工事の規模・複雑性等からみて個別の専門工事として施工が困難なものも含まれます。一式工事は他の工事とは異なり、確認資料として契約書や注文書、見積書、工程表等の提示を求められる場合があります。

 また上記の通り、基本的に500万円以上の請負工事をする場合に建設業許可が必要とされていますが、建築一式工事については1件の請負代金が1,500万円以上の場合に必要とされています。

 

他の業種と間違えやすい工事

 ビルの外壁に固定された避難階段を設置する工事は「消防施設工事」ではなく建築物の躯体の一部の工事として「建築一式工事」又は「鋼構造物工事」に該当します。

必要となる専任技術者の国家資格等

 専任技術者の学歴要件につき、建築一式工事業の許可を受けようとする場合には建築学又は都市工学に関する学科を卒業している必要があります。

 また、下記の資格を有することで実務経験を証明することなく建築一式工事の許可を取得することが可能です。

建築一式工事を取得できる資格

・一級建築施工管理技士※

・二級建築施工管理技士(建築)

・一級建築士

・二級建築士

※特定建設業許可の建築一式工事も取得可能

建設業許可の取得方法:ステップバイステップガイド

 それでは建設業許可申請に必要となる書類やその準備方法、手続きの流れ、行政書士の活用方法を順を追って説明します。

建設業許可の申請書類とその準備方法

 愛知県建設業許可の新規申請に必要な書類は下記になります。愛知県建設業許可様式は下記ページからダウンロードできます。

建設業許可様式ダウンロード

建設業許可の新規申請の必要書類

〇個人事業主の場合

・直近5年の確定申告書一式

・直近5年の所得証明書

・過去5年に行った建設工事の請求書(年1件)

・上記請求書の入金を確認できる通帳

・専任技術者の資格証明書又は実務経験証明書

・経管と専任技術者の健康保険証の写し(個人事業主本人のものは不要)

・500万円以上の預金残高証明書(自己資本額が500万円以上なら不要)

・社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)の領収書

・労働保険概算・確定保険料申告書の写し

・営業所の写真(外観、入口付近、事務スペース)

・登記されてないことの証明書

・身元証明書

・事業税の納税証明書

〇法人の場合

・直近3年分の決算報告書一式

・履歴事項証明書

・過去5年に行った建設工事の請求書(年1件)

・上記請求書の入金を確認できる通帳

・専任技術者の資格証明書又は実務経験証明書

・経管と専任技術者の健康保険証の写し

・500万円以上の預金残高証明書(自己資本額が500万円以上なら不要)

・社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)の領収書

・労働保険概算・確定保険料申告書の写し

・営業所の写真(外観、入口付近、事務スペース)

・役員全員の登記されてないことの証明書

・役員全員の身元証明書

・定款の写し

・事業税の納税証明書

 上記のうち、所得証明書は市民税を納付している市区町村で発行してもらう書類です。また、登記されてないことの証明書は法務局の戸籍課で発行される書類です。身元証明書は本籍のある市区町村役場で取得します。

 また、事業税の納税証明書は県税事務所の窓口で取得します。

取得までの流れと必要な手続き

愛知県の場合の建設業許可の取得までの流れは下記の通りです。

①必要書類の収集と申請書一式の作成
上記必要書類や確認資料を収集し、申請書ダウンロードページから申請書一式をダウンロードして、作成をします。
②仮受付
①の書類一式を主たる営業所を管轄する建設事務所へ提出し、書類のチェックを受けます。書類に不備や修正点がある場合には、補正の連絡が入るので対応します。約2週間~1ヶ月で③の本申請の手続きをする旨の連絡が入ります。
③本申請
建設事務所の窓口にて、申請書への日付の記入や愛知県証紙による行政手数料の90,000円を納付を行い、本申請手続きをします。預金残高証明書の提出が必要な場合は、このタイミングで基準日が4週間以内のものを提出します。
④建設業許可証の受取
③の手続き後、約23営業日後に主たる営業所に簡易書留にて許可証が郵送されます。

行政書士の活用方法とそのメリット

 建設業許可申請は、許可申請の手引きを読み込み自分で作成することも可能ですが、愛知県の場合だと手引きだけ59ページもあり、また必要書類の収集も窓口がそれぞれ違っているので過分な時間と労力が必要になります。

 特に建築一式工事の申請の場合には、他の業種と比較して提出した書類により確認資料が別途求められる場合がある等、専門的な知識が必要になります。自力で申請をしても不備訂正に時間がかかってしまったり、許可が下りないリスクもありますので、建設業許可を専門とする行政書士へのご相談をお勧めします。

まとめ

 本記事では建設業許可の内、建築一式工事の許可取得要件を説明しました。土木一式工事と並び、建築一式工事は大規模又は施工が複雑な工事を、原則として元請け業者の立場で総合的にマネジメントする事業者向けの業種です。そのため、建設工事の業種認定の際に、追加書類を求められる場合がある等、取得の難易度は他の業種と比較して上がります。

 建築一式工事の取得をご検討の方は、ぜひ当事務所まで一度ご相談ください。

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投稿者プロフィール

start-up22
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【スタートアップ行政書士事務所 代表/行政書士】
佐野 太一(さの たいち)

2022年3月開業。愛知県あま市にて行政書士事務所を経営。
専門分野は建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可、補助金申請。