必要な資格とは?とび土工工事業の建設業許可申請ガイド
とび・土工工事業とは?
建設業許可の1業種であるとび土工工事業について解説します。まずはとび土工工事業の建設工事の内容と例示を確認しましょう。
とび・土工工事業の内容
とび・土工工事業の建設工事の内容は下記の通りです。
①足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物のクレーン等による運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事
②くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事
③土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事
④コンクリートにより工作物を築造する工事
⑤その他基礎的ないしは準備的工事
とび・土工工事の例示
上記の説明だけでは分かりずらいですが、どび・土工工事業は非常に様々な建設工事が該当します。その例示としては、下記の通りです。
とび・土工工事業の例示
①とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付け工事
②くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事
③土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事
④コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事
⑤地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事
類似した他の業種との区分の考え方
とび・土工工事はその内容が広範であるため、他の業種と類似した工事も含まれており、その判別を正確に行うことが重要です。主要なものは下記の通りです。
①「コンクリート据付け工事」の石工事業とタイル・レンガ・ブロック工事業の区分
・根固めブロック、消波ブロックの据付け等土木工事において規模の大きいコンクリートブロックの据付けを行う工事、プレキャストコンクリートの柱、梁等の部材の設置工事等がとび・土工工事業における「コンクリートブロック据付け工事」である。
・建築物の内外装として擬石等をはり付ける工事や法面処理、又は擁壁としてコンクリートブロックを積み、又ははり付ける工事等が石工事業における「コンクリートブロック積み(張り)工事」である。
・コンクリートブロックにより建築物を建設する工事等がタイル・れんが・ブロック工事業における「コンクリートブロック積み(張り)工事」であり、エクステリア工事としてこれを行う場合を含む。
②「鉄骨組立工事」と鋼構造物工事業との区分
・鉄骨の製作、加工から組立てまでを一貫して請け負うのが鋼構造物工事業における「鉄骨工事」である。
・既に加工された鉄骨を現場で組み立てることのみを請け負うのが、とび・土工工事業における「鉄骨組立工事」である。
③「プレストコンクリート工事」と土木工事業との区分
「プレストレストコンクリート工事」のうち橋梁等の土木工作物を総合的に建設するプレストレストコンクリート構造物工事は、土木工事業に該当する。
④「地盤改良工事」について
「地盤改良工事」とは、薬液注入工事、ウェルポイント工事等各種の地盤の改良を行う工事を総称したものである。
⑤「吹付け工事」と左官工事業との区分
・とび・土工工事業における「吹付け工事」とは、モルタル吹付け工事及び種子吹付け工事を総称したものであり、法面処理等のためにモルタル又は種子を吹付ける工事をいう。
・建築物に対するモルタル等の吹付けは左官工事業における「吹付け工事」に該当する。
⑥「法面保護工事」について
「法面保護工事」とは、法枠の設置等により法面の崩壊を防止する工事である。
⑦「道路付属物設置工事」について
「道路付属物設置工事」には、道路標識やガードレールの設置工事が含まれる。
⑧「屋外広告物設置工事」と鋼構造物工事業との区分
・現場で屋外広告物の製作、加工から設置までを一貫して請け負うのが鋼構造物工事業における「屋外広告工事」である。
・上記以外の工事がとび・土工工事業における「屋外広告物設置工事」である。
⑨防水工事業との区分
・トンネル防水工事等の土木系の防水工事はとび・土工工事業に該当する。
・建築系の防水工事は防水工事業に該当する。
各業種の建設工事内容の詳細については、下記サイトより手引きもご参照ください。
とび・土工工事業の専任技術者要件
次にとび・土工工事業の専任技術者要件を見ていきます。専任技術者の要件は①一定の資格者、②所定学科卒業後、一定期間の実務経験を有すること、③10年以上の実務経験を有すること、のどれかを満たすことです。
その内、下記ではとび・土工工事業の資格要件と、所定学科について説明致します。
とび・土工工事業の資格要件
とび・土工工事業の専任技術者の資格要件は、下記の通りです。
とび・土工工事業の資格要件
一級建設機械施工技士※ 、一級建設機械施工管理技士※、一級建設機械施工管理技士、二級建設機械施工技士 (第1種~第6種)、二級建設機械施工管理技士、一級土木施工管理技士※ 、一級土木施工管理技士補(合格後3年の実務経験要)、二級土木施工管理技士(種別:土木又は薬液注入)、二級土木施工管理技士(種別:鋼構造物塗装)(合格後5年の実務経験要)、二級土木施工管理技士補(合格後5年の実務経験要)、一級建築施工管理技士※、一級建築施工管理技士補(合格後3年の実務経験要)、二級建築施工管理技士(種別:躯体)、二級建築施工管理技士(種別:建築又は仕上げ)(合格後5年の実務経験要)、二級建築施工管理技士補(合格後5年の実務経験要)、一級造園施工管理技士 (合格後3年の実務経験要)、一級造園施工管理技士補(合格後3年の実務経験要)、二級造園施工管理技士 (合格後5年の実務経験要)、二級造園施工管理技士補 (合格後5年の実務経験要)、建設・総合技術監理(建設)※、建設「鋼構造及びコンクリート」・総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」)※、農業「農業土木」・総合技術監理(農業・「農業土木」)※、水産「水産土木」・総合技術監理(水産「水産土木」)※、森林「森林土木」・総合技術監理(森林「森林土木」)※、検定職種:型枠施工、とび・とび工(2級の場合実務経験要)、コンクリート圧送施工(2級の場合実務経験要)、ウェルポイント施工(2級の場合実務経験要)、地すべり防止工事(地すべり防止工事士)(合格後1年の実務経験要)、基礎ぐい工事、登録橋梁基幹技能者、登録コンクリート圧送基幹技能者、登録トンネル基幹技能者、登録機械土工基幹技能者、登録PC基幹技能者、登録鳶・土工基幹技能者、登録切断穿孔基幹技能者、登録エクステリア基幹技能者、登録グラウト基幹技能者、登録運動施設基幹技能者、登録基礎工基幹技能者、登録標識・路面標示基幹技能者、登録土工基幹技能者、登録発破・破砕基幹技能者、登録圧入工基幹技能者、登録送電線工事基幹技能者
※の資格については、特定建設業許可の資格要件としても認められます。
とび・土工工事業の所定学科
また、とび・土工工事業の所定学科として認められるのは、下記の学科です。
とび・土工工事業の所定学科
土木工学又は建築学に関する学科
高等学校の上記所定学科を卒業した場合には5年以上の実務経験があること、大学の所定学科を卒業した場合には3年以上の実務経験があることが必要です。実務経験については、10年以上の実務経験を証明する場合と同様に、実務経験証明書に年数分の実務経験を記載することで証明します。
とび・土工工事業の建設業許可申請
次にとび・土工工事業における建設業許可の概要と申請の流れを見ていきます。
建設業許可の概要
建設業許可が必要な建設工事とは
1件の請負代金が税込500万円以上の建設工事を請け負うためには、建設業許可を取得する必要があります。ただし建築一式工事の場合には、1件の請負代金が税込1,500万円未満であるか、木造住宅で延べ面積が150㎡未満の工事である場合には、許可を取得することなく、工事の請負が可能です。
知事許可と大臣許可
建設業許可は都道府県知事の許可と国土交通大臣の許可に分かれています。どちらを取得すべきかは、設置する営業所が一つの都道府県内のみにある場合には知事許可、複数の都道府県内にまたがる場合には大臣許可を取得します。
ですので、愛知県内のみに営業所がある企業が、愛知県内と岐阜県内で建設工事を施工している場合には、愛知県知事許可を取得します。愛知県知事許可を取得すれば、愛知県以外の全国の都道府県内で500万円以上の建設工事の施工が可能となります。
特定許可と一般許可の違い
発注者から直接請け負った1件の元請工事につき、下請けに出す代金の合計額が税込4,500万円(建築工事業は税込7,000万円)以上となる場合には、その元請業者につき特定建設業許可が必要になります。
上記はあくまで元請企業の場合であり、下請企業として、孫請け企業に出す請負金額が税込4,500万円以上となる場合でも、特定建設業許可は不要です。特定許可の要件に該当しない建設工事のみを行う場合には、一般許可で足ります。
建設業許可の許可要件について
建設業許可の許可要件は、①5年以上の経営経験があること、②専任技術者要件を満たす者がいること、③誠実性要件を満たすこと、④500万円以上の自己資本又は預金があることの4点を全て満たしていることです。
建設業許可の必要書類や概要については、下記の記事もご参照ください。
建設業許可の申請の流れ
建設業許可申請の流れは、下記の通りです。
- ①申請書類の作成と必要書類の収集
- 愛知県のホームページからフォーマットを取得し、申請書類を一式作成します。また役所で取得が必要な書類等の収集を行います。
- ②管轄の建設事務所の窓口で仮申請
- 主たる営業所を管轄する建設事務所に対して、愛知県内の場合はまず仮申請を行います。仮申請後に書類の不備や追加書類の提出を求めれた場合は、指示に従って対応をします。
- ③管轄の建設事務所の窓口で本申請
- 書類チェックが終わると建設事務所より連絡が入り、窓口に出向いて本申請を行います。この時に行政手数料の支払いと、預金残高証明書の提出が必要であれば提出します。
- ④約1ヶ月後に郵送にて許可証を受領
- 建設事務所での事務処理完了後、約1ヶ月後に簡易書留で許可証が郵送されます。その際に営業所確認も兼ねてますので、確実な受取が必要なので、注意が必要です。
とび・土工工事業についてのQ&A
現在とび・土工工事業の建設業許可を取得していますが、足場の仮設工事で組立てから解体までの工事をする際に、解体工事業の業種についても許可は必要でしょうか。
必要ありません。とび・土工工事業の許可のみで足場の仮設工事の組立てから解体までの工事が可能です。それぞれの専門工事において建設される目的物について、それのみを解体する工事はその専門工事に該当するとされています。
当社では橋梁の耐震補強工事を請け負っていますが、この度建設業許可を取得することにしました。どの業種で許可を取得するべきでしょうか。
橋梁工事はその材質により、鋼構造物工事業か土木工事業に該当します。鉄骨で作る鉄橋の場合は鋼構造物工事業に当たります。一方コンクリートで作られる橋梁については、土木工事業が該当します。また耐震補強のために、橋梁の基礎部分のみの工事を行ったり、既製品である鉄骨を現場で組立てる作業のみの場合には、とび・土工工事業に該当する可能性もあります。申請前に建設事務所の窓口で確認されることをお勧めします。
まとめ
記事前半では、とび・土工工事業の内容や例示、類似した業種区分の考え方について説明しました。また記事の後半では、とび・土工工事業の建設業許可の申請やQ&Aについて解説しました。
とび・土工工事業は、その施工内容が広範であるため、取得する業種の選定に注意が必要です。ご不明点がある方は、お気軽に当事務所までご相談ください。
投稿者プロフィール
- 【スタートアップ行政書士事務所 代表/行政書士】
佐野 太一(さの たいち)
2022年3月開業。愛知県あま市にて行政書士事務所を経営。
専門分野は建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可、補助金申請。
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