建設業許可の専任技術者要件とは?主任技術者や監理技術者との違い

建設業許可における専任技術者要件とは

 建設業許可における専任技術者要件とは、設置する営業所毎にその営業所で行う建設工事の業種に精通した技術者が常勤しているという要件です。「常勤」が要件とされているので、複数の営業所に同じ技術者を配置することは出来ません。また、同じ営業所で複数の建設工事の業種を行う場合には、複数人専任技術者を配置することも出来ますし、同じ人が複数の業種を兼務することも出来ます。

 この記事では、建設業許可の専任技術者要件や主任技術者・配置技術者に特化した記事になりますので、建設業許可手続きの概要について知りたい方は下記記事をご参照ください。

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専任技術者要件について

一般建設業許可の専任技術者要件

 専任技術者は下記のいずれかを満たす人から選任する必要があります。下記は一般建設業許可の専任技術者要件になります。

一般建設業許可の専任技術者要件

下記のいずれかを満たす者であること

①1級資格、2級資格等のその業種指定の資格を保有している者

②高校の所定学科を卒業してその業種につき5年以上の実務経験がある者か、大学又は専門学校の所定学科を卒業してその業種につき3年以上の実務経験がある者

③その業種につき10年以上の実務経験を有する者

上記①の資格につきましては下記ページの手引きもご参照ください。

愛知県建設業許可の手引きダウンロードページ

特定建設業許可の専任技術者要件

 また、元請として下請に発注する建設工事の合計金額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)となる場合には、特定建設業許可が必要になります。特定建設業許可業者は大規模かつ複雑な建設工事を行うことが多いので、その社内内部の技術的専門である専任技術者の要件は、一般建設業許可の場合と比較して厳しい条件となっています。下記が特定建設業許可の専任技術者要件です。

特定建設業許可の専任技術者要件

下記のいずれかを満たす者であること

①国土交通大臣の定める試験に合格した方や免許を受けた方

②一般建設業許可の専任技術者要件に該当し、かつ元請として4,500万円以上の工事について2年以上指導監督的な実務経験を有する方

③国土交通大臣が①又は②と同等以上の能力を有すると認定した方

※指定建設業である土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業については、①か③の場合に限られます。

専任技術者要件の証明に必要となる書類

 上記専任技術者の条件を満たすことの証明や「常勤性」の証明は、下記の書類を提出することにより行います。

専任技術者要件の証明

専任技術者の常勤性の証明ー専任技術者の健康保険証の写し

上記①の資格を有することの証明ー資格者証の写し

上記②の所定学科を卒業したことの証明ー卒業証書の写し又は卒業証明書の写し

上記②③の実務経験の証明ー実務経験証明書(様式9号)

実務経験証明書の記載方法

 上記の専任技術者要件の証明書類のうち、実際には実務経験証明書を提出して要件を満たすことの証明をされる方が多いです。下記が実務経験証明書の記載例になります。

 上記は個人事業主と法人化した後の実務経験を合わせて申告する場合の実務経験証明書の作成例になります。実務経験証明書は証明者・技術者毎に作成する必要があります。年1件行った当該業種の建設工事の実務経験の内容と施工期間を必要年数分記載し届け出ます。

専任技術者の役割とは?テレワークは可能か?

 では、実際に専任技術者として選任された者の役割とは、どのようなものでしょうか。専任技術者の役割は主に下記の2点とされています。

①適正な請負契約が締結されるよう、技術的観点から契約内容の確認を行う。

②請負契約の適正な履行が確保されるよう、現場の監理技術者等のバックアップサポートを行う。

 また令和3年12月には、上記役割が果たせるような場合には、テレワークにより職務に従事する場合も専任要件を満たすことが、建設業許可事務ガイドラインに明記されました。

建設業許可事務ガイドライン(抄)
【第7条関係】
2.専任技術者について(第2号)
(1)「専任」の者とは、その営業所に常勤(テレワークを行う場合を含む。)して専らその職務に従事することを要する者をいう。

 ただ、専任技術者の住所やテレワークを行う場所の所在地が、常勤する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識的に通勤不可能な場合は専任要件を満たさないとされているので、注意が必要です。

専任技術者になれる社員がいない場合の方法

 専任技術者の条件を満たす人が社内にいない場合の方法ですが、他社の出向社員を選任することも出来ます。ただその際も「常勤」の要件を満たす必要がありますので、出向元の会社と専任技術者を兼務したり、名義貸しのような形を取ることは出来ません

 建設業許可を取得する方法としては上記方法も取り得るんですが、出向解除になった場合には建設業許可の要件を満たさない形になり、許可が失効してしまいます。一時的な対応としては良いと思いますが、自社の社員で専任技術者要件を満たす人材を確保しておく方が賢明だと思います。

 また経営業務管理責任者は専任技術者を兼ねることも出来ます。自社の社員でも退社リスクがあることを考えると、継続勤務が想定できる役員を専任技術者として選任して頂いた方が、建設業許可運用上は良いかも知れません。

専任技術者がもし退社してしまったら?

 営業所に置く専任技術者は空白期間が生じないように選任しておく必要があります。仮に専任技術者として選任した社員が急に退社してしまって他に専任技術者となれる者がいない場合には、その業種につき建設業許可は失効してしまう形になります。

 そうならないように、専任技術者の要件を満たす社員をリストアップし、ご管理されることをお勧め致します。専任技術者の変更手続きは、事実発生後2週間以内に行う必要があるので注意してください。

主任技術者と監理技術者とは

 また建設業者は、建設工事の施工に際して主任技術者監理技術者の設置が義務づけられています。根拠条文は下記になります。

建設業法
第二十六条
 建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあつては、同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。

 条文を読んだだけでは理解が難しいと思いますので、下記にて詳細をご説明します。

主任技術者とは?

 建設業者が建設工事を施工する際に、その現場に設置が義務付けられる技術者を主任技術者といいます。主任技術者は専任技術者となるための要件を満たす者の中から選任する必要があります。専任技術者はその営業所に「専任」している必要があるので、現場に置かれる主任技術者は基本的に専任技術者とは別の者を選任する必要があります。

 主任技術者は、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理を担当します。

監理技術者とは?

 また、特定建設業者は、元請け業者として下請業者に発注する請負代金の合計額が4,500万円以上(建築工事業は7,000万円以上)となる場合には、特定建設業の専任技術者要件に当てはまる者で建設工事の工事現場で施工の技術上の管理を行う者を監理技術者として置かないといけないとされています。

 ですので、一般建設業者の工事現場に置かれるのは主任技術者、特定建設業者の工事現場に置かれるのは主任技術者か監理技術者となります。

専任技術者が主任技術者や監理技術者を兼務できる場合

専任技術者が主任技術者等を兼務できる場合

 専任技術者は、営業所に常勤して工事現場に置かれる主任技術者や監理技術者につきバックアップサポートをする役割を果たすのが基本です。しかし、一定の場合には専任技術者が主任技術者や監理技術者を兼務することが認められています。実際には下記のような場合です。

専任技術者が主任技術者等を兼務できる要件

下記を全て満たす場合

①専任技術者が常勤している営業所で請負契約が締結されたこと

②その営業所と工事現場が近接していること

③営業所と常時連絡体制が構築されていること

※兼務する現場は「非専任現場」である必要があります。

 上記の「非専任現場」とは、下記に該当しない場合をいいます。

主任技術者・監理技術者の「専任」が必要な場合

 建設業法第二十六条第3項には下記のように定められています。

建設業法
第二十六条(抄)
 公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。

 上記の「重要な建設工事」として建設業法施行令には請負代金4,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)の建設工事が定められています。つまり、個人住宅や長屋等を除いたほとんどの建設工事において請負金額4000万円以上(建築一式工事は8000万円以上)であれば、主任技術者等の「専任」が必要な建設工事となります。

 専任なので他の工事現場の職務を兼務することが出来なくなります。逆に主任技術者の場合、上記の金額未満の建設工事であれば、施工の技術上の管理を誠実に行うことが可能な範囲で、複数の工事現場を兼務することは可能です。

専任技術者や主任技術者、監理技術者のQ&A

専任技術者が先日退職しました。年度更新までは許可が有効だと思っているのですが、退職した社員が別の会社で専任技術者となった場合にはバレるのでしょうか。

専任技術者に変更が生じた場合には、事実発生後2週間以内に届け出る必要があります。年度更新まで許可が有効になるということはなく、専任技術者が欠けてしまう場合には建設業許可が失効する形になります。また、専任技術者は専任技術者証明書(様式8号)により氏名や住所、生年月日等を届出ることに加えて、健康保険証の写しにより常勤性を確認されますが、氏名や生年月日等の情報が一致した場合には調査がされます。バレる可能性が高いですし、罰則の対象にもなり得ますので専任技術者に変更が生じた場合はすぐに対応するようにしましょう。

専任技術者と主任技術者は兼務できるのでしょうか。また建設業許可業者は建設工事に配置した主任技術者をどこかに届け出る義務があるのでしょうか。

専任技術者は営業所に常勤する者であるので、現場の担当者である主任技術者と兼務できないのが原則ですが、請け負い代金の金額が4,000万円未満であり、現場と営業所が近接していて常時連絡が取れる体制が構築できている等の一定の場合には、専任技術者と主任技術者の兼務は認められています。また、主任技術者や監理技術者等は、施工体制台帳や再下請負通知書といった書類への記載が必要になりますし、事業年度終了届の際に提出する工事経歴書には各工事の主任技術者等を記載して提出します。

まとめ

 建設業許可の要件である専任技術者要件は、一定の資格や所定学科での学歴、実務経験をもとに証明する必要があります。また、専任技術者が営業所に置かれてることは建設業許可の維持要件でもありますので、該当社員の退社等のリスクに備えて専任技術者候補のリストアップをしておく等の社内対策が重要となります。

 また、建設業許可取得後には、現場に主任技術者や監理技術者を配置する必要があります。原則営業所に常勤している必要のある専任技術者の兼務は認められませんが、非専任現場である一定の場合には兼務も可能な場合があります。

 社内のコンプライアンスを遵守して頂くためにも建設業法に反しない体制の構築や事業運営をしていきましょう。

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投稿者プロフィール

start-up22
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【スタートアップ行政書士事務所 代表/行政書士】
佐野 太一(さの たいち)

2022年3月開業。愛知県あま市にて行政書士事務所を経営。
専門分野は建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可、補助金申請。