建設業許可票掲示のサイズ基準と帳簿の備付けについて解説
建設業許可票掲示とは?制度の概要と目的
建設業の許可を受けた事業者は、店舗(本店、支店、営業所等)および建設工事の現場ごとに、建設業許可を受けていることを示す標識(建設業許可票)を掲示しなければなりません。建設業法第40条に規定されています。この制度は、無許可営業の防止や適性な建設工事が行われるための透明性確保を目的としています。
(標識の掲示)
第四十条 建設業者は、その店舗及び建設工事(発注者から直接請け負つたものに限る。)の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令の定めるところにより、許可を受けた別表第一の下欄の区分による建設業の名称、一般建設業又は特定建設業の別その他国土交通省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。
建設業許可票は、許可を取得すれば自動的に行政から交付・提供されるものではありません。許可内容に基づき、建設業者自身が法令に沿った形式で作成し、掲示する必要があります。そのため、許可を取得した後も、掲示内容や掲示場所に不足がないかを確認することが重要です。
なお、建設業許可票の掲示義務に違反した場合、建設業法に基づく指導や罰則の対象となる可能性があります。「うっかり掲示していなかった」「サイズや記載内容が違っていた」といったケースでも問題となることがあるため、制度の内容を正しく理解し、適切に対応することが求められます。

なお、建設業許可の取得が必要な場合や手続きにつきましては、下記ページをご参照ください。
愛知県建設業許可申請の必要書類と手数料 - スタートアップ行政書士事務所
建設業許可票の掲示が必要となる場所
建設業許可票の掲示が必要となる場所は、建設業者の店舗(本店・支店・営業所等)および、注文者から直接受注した建設工事の各現場です。以前は下請業者の場合でも各現場への許可票の掲示が必要でしたが、元請け業者のみ掲示すれば良いという形に変わりました。
店舗に掲示する場合は、来訪者や取引先など公衆が容易に確認できる場所に掲示する必要があります。具体的には、受付やエントランス付近、待合スペースなど、人目に触れやすい場所に掲示する場合が一般的です。
また、建設工事の現場においては、工事現場を囲うフェンスや仮囲いなど、外部から確認できる位置に掲示することが求められます。現場事務所の内部など、関係者しか確認できない場所への掲示では要件を満たさない場合があるため注意が必要です。
このように、建設業許可票は「掲示しているかどうか」だけでなく、公衆の見やすさを意識した掲示場所であるかも重要なポイントとなります。
建設業許可票掲示のサイズ基準
建設業許可票のサイズについては、建設業法施行規則により基準が定められています。
掲示する場所が店舗(営業所等)であるか、建設工事の現場であるかによって、求められるサイズが異なる点に注意が必要です。
まず、店舗(本店・支店・営業所等)に掲示する建設業許可票については、縦35センチメートル以上 × 横40センチメートル以上の大きさとする必要があります。来訪者が許可内容を容易に確認できるよう、十分な視認性が確保されるサイズが求められています。

一方、建設工事の現場に掲示する建設業許可票については、縦25センチメートル以上 × 横35センチメートル以上と定められています。

これらのサイズ基準を下回っている場合や、極端に文字が小さく判読しづらい場合には、掲示義務違反と判断される可能性があります。市販の許可票を使用する場合でも、購入前にサイズが法令基準を満たしているかを必ず確認することが重要です。
また、許可票の材質については「金看板」と呼ばれるように金属製が一般的ですが、素材自体に制限はありません。ただし、店舗に掲示する許可票は5年間掲示することになるため、劣化しにくい金属製のものが特に適しています。
建設業許可票に記載すべき事項
建設業許可票には、掲示する場所ごとに必要な情報が定められています。店舗と工事現場でそれぞれ異なる部分があるため、注意して作成する必要があります。
店舗に掲示する場合の記載事項
店舗(本店・支店・営業所等)に掲示する許可票には、以下の事項を記載します。
- 一般・特定許可の別
- 許可年月日、許可番号、許可を受けた建設業の種類
- 商号または名称
- 代表者の氏名
工事現場に掲示する場合の記載事項
工事現場に掲示する許可票には、店舗掲示事項に加えて、施工に関与する責任者を明示する必要があります。
- 一般・特定許可の別
- 許可年月日、許可番号、許可を受けた建設業の種類
- 商号または名称
- 代表者の氏名
- 主任技術者または監理技術者の氏名
許可票の内容変更・更新時の注意点
許可票の掲示事項のうち、許可年月日や許可番号は5年ごとの更新で変わるため、更新のたびに許可票を作り直す必要があります。また、代表者の変更や建設業種の追加があった場合も、記載内容の変更が必要となるので注意が必要です。
帳簿の備付け義務とは?
帳簿の備付け義務とは、建設業者が営業所ごとに、請負契約の内容を記載した帳簿を作成・備え付け、一定期間保存しなければならないとする建設業法上の義務です。この制度は、建設工事の適正な施工体制を確保するとともに、契約内容や施工状況を後から確認できるようにすることを目的としています。
根拠条文は下記の通りです。
(帳簿の備付け等)
第四十条の三 建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所ごとに、その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。
建設業者は、営業所ごとに請負った建設工事について、契約金額、工期、発注者などの事項を記載した帳簿を備え付ける必要があります。これらの帳簿は、目的物の引渡し後5年間保存しなければなりません。ただし、新築住宅に関する工事については保存期間が10年間とされており、通常の工事よりも長期の保存が求められます。
帳簿の備付け・保存義務を怠った場合、行政指導や監督処分の対象となる可能性があります。日頃から適切に帳簿を作成・管理し、いつでも確認できる状態を整えておくことが重要です。
備え付ける帳簿の種類と内容
建設業者は、営業所ごとに請負契約の内容を記載した帳簿を備え付ける必要があります。帳簿には、元請として受注した工事の情報だけでなく、下請契約に関する事項や、新築住宅工事に特有の情報も記載しなければなりません。以下は、建設業法で定められている主な帳簿記載事項です。
1. 営業所に関する事項
- 営業所の代表者の氏名
- 就任年月日
2. 注文者と締結した建設工事の請負契約に関する事項
- 請け負った建設工事の名称および工事現場の所在地
- 注文者との契約日
- 注文者の商号または名称、住所、許可番号
- 注文者による完成確認のための検査が完了した年月日
- 当該建設工事の目的物を引き渡した年月日
3. 新築住宅の建設工事に関する追加事項(該当する場合)
発注者と新築住宅の建設工事を締結した場合には、通常の記載事項に加えて、次の内容を記載します。
- 住宅の面積
- 複数の建設業者で請負契約を締結した場合の建設瑕疵担保責任の負担割合
- 住宅瑕疵担保責任保険法人と住宅建設瑕疵担保責任保険契約を締結し、発注者へ書面交付している場合の当該保険法人に関する情報
4. 下請契約に関する事項
- 下請負人に請け負わせた建設工事の名称および工事現場の所在地
- 下請負人との契約日
- 下請負人の商号または名称、住所、許可番号
- 建設工事の完成を確認するための検査を完了した年月日
- 当該建設工事の目的物の引き渡しを受けた年月日
5. 特定建設業者が一般建設業者へ下請発注した場合の追加事項
特定建設業者が、資本金4,000万円未満の一般建設業者に下請工事を発注した場合には、上記の記載事項に加えて、次の内容も帳簿に記載する必要があります。
- 支払った下請代金の金額および支払日
- 支払手形を交付した場合の手形金額および支払期日
- 下請代金の一部を支払った場合の残額
- 下請代金の支払いが遅延し、遅延利息を支払った場合の金額および支払日
帳簿は、単に作成するだけでなく、内容が正確かつ最新の状態で管理されていることが重要です。記載漏れや更新忘れがないよう、工事の進行に合わせて適宜確認するようにしましょう。
帳簿に添付すべき書類と営業に関する図書について
建設業法では、帳簿本体を備え付けるだけでなく、一定の書類を添付書類として保存すること、また元請業者については営業に関する図書を別途保存することが求められています。これらは、契約内容や施工体制、支払状況の適正性を後から確認できるようにするための重要な資料です。
帳簿に添付すべき書類
帳簿には、次の書類を必要に応じて添付・保存する必要があります。
- 契約書またはその写し
注文者や下請負人と締結した建設工事の請負契約書、またはその写しを添付します。契約内容が帳簿の記載事項と整合していることが重要です。 - 下請代金の支払いを証明する書類(特定建設業者の場合)
特定建設業の許可を受けた業者が、資本金4,000万円未満の一般建設業者または個人事業主に建設工事を下請けさせた場合には、
下請負代金の支払い済み額、支払年月日、支払手段を証明する書類(領収書、振込明細等)を保存する必要があります。 - 施工体制台帳の抜粋(一定規模以上の下請契約がある場合)
特定建設業者が、元請工事について3,000万円以上の下請契約を締結した場合には、工事現場に備え付ける施工体制台帳のうち、必要な部分の抜粋を帳簿に添付します。
営業に関する図書(保存期間10年間)
以下の営業に関する図書は、元請業者に限り備え付け・保存が義務付けられています。保存期間はいずれも10年間です。
- 完成図
完成図を作成した場合、または発注者から完成図の提供を受けた場合には、これを保存します。 - 発注者との打ち合わせ記録
工事内容に関して発注者と打ち合わせを行い、その記録を相互に書面で交付した場合には、その記録を保存する必要があります。 - 施工体系図(特定建設業者のみ)
施工体系図の作成義務がある場合には、これを保存します。施工体系図は、下請構造が明確に分かるよう作成されたものでなければなりません。
帳簿や添付書類、営業に関する図書は、行政調査や立入検査の際に確認される重要な資料です。日頃から整理・管理を徹底し、必要な書類をすぐに提示できる状態を維持しておくことが重要です。
帳簿の備付け場所と管理方法
帳簿は、各営業所ごとに備え付け・保存する必要があります。本店や本社で一括して保管することは認められておらず、営業所単位で請負契約の内容を確認できる状態にしておかなければなりません。この点は実務上見落とされやすいため、特に注意が必要です。
また帳簿および添付書類は、電子データによる保存も可能とされています。ただし、必要に応じて紙媒体に印刷できる状態で管理されていることが前提となります。電子保存を行う場合には、データの改ざんを防止する観点から、デジタルタイムスタンプの利用を心がけるとよいでしょう。
また、契約書や領収書などの添付書類をそのままファイルに綴じているだけでは、帳簿としての要件を満たさない場合があります。帳簿には、法令で定められた必要事項が整理され、一覧性をもって記載されていることが求められます。帳簿本体と添付書類の役割を正しく理解し、適切に管理することが重要です。
帳簿や関連書類は、立入検査などで確認を求められることも多いため、「どこに何があるかすぐに分かる管理体制」を日頃から整えておくことが、リスク回避につながります。
許可票掲示・帳簿備付けでよくある違反事例
建設業法では、帳簿や添付書類の備付け・保存義務に違反した場合、法に基づき罰則が課せられます。具体的な違反例は以下の通りです。
- 営業所に帳簿及び添付書類が備付けられていなかった場合
- 帳簿及び添付書類は備付けられていたが、必要な保存期間(5年間)が守られていなかった場合
- 発注者から直接請け負った建設工事の完成図や打ち合わせ記録など、営業に関する図書が10年間保存されていなかった場合
これらの義務を怠った営業所には、10万円以下の過料が科される可能性があります。また、工事の過程や完成後にトラブルが発生した場合、帳簿や関連書類が保存されていないと、請負業者側が不利になることがあります。特に多いトラブルは金銭に関するものや、工事の欠陥に関するものです。また労災認定の際には、帳簿が従業員が実際に工事現場に従事していた証拠としても重要な役割を果たします。
まとめ|適正な掲示と帳簿管理で信頼される建設業者へ
建設業許可票の適正な掲示や帳簿・添付書類の正確な備付け・保存は、単なる法令遵守の義務にとどまりません。これらをしっかり行うことで、発注者や下請業者、従業員からの信頼を得ることができます。
建設業許可票は誰もが確認できる場所に掲示し、更新や変更があれば速やかに内容を反映することが重要です。また、帳簿や営業に関する図書は、営業所ごとに整理・保存し、必要な期間確実に保持することで、トラブル発生時の証拠としても役立ちます。
適切な管理体制を整え、常に最新の状態を保つことは、企業としての信用力を高め、法令違反によるリスクを回避する最も確実な方法です。信頼される建設業者であるために、掲示・帳簿管理を日常的に見直す習慣をつけましょう。
当事務所へのお問い合わせは、下記お問い合わせフォームよりお願いいたします。
投稿者プロフィール

- 【スタートアップ行政書士事務所 代表/行政書士】
佐野 太一(さの たいち)
2022年3月開業。愛知県あま市にて行政書士事務所を経営。
専門分野は建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可、補助金申請。
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