愛知県建設業許可の事業年度終了届作成上の注意点

愛知県建設業許可の事業年度終了届(決算変更届)とは?

 事業年度終了届(決算変更届)は、建設業許可業者に毎年義務付けられている手続きです。根拠条文は建設業法第11条第2項に記載されています。

建設業法第11条第2項 許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における第六条第一項第一号及び第二号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。

 毎事業年度に行った工事経歴や直前3年の工事施工金額、決算書類等を管轄の建設事務所を通じて許可行政庁(愛知県建設業許可の場合は愛知県知事)に届け出る必要があります。

事業年度終了届の提出時期と期限

 事業年度終了届は、毎事業年度経過後4ヶ月以内に提出する必要があります。法人の場合は決算月の4ヶ月後の月の月末、個人事業主の場合は毎年4月末が提出期限になります。

 事業年度終了届の提出を怠ると、建設業法第50条により6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。

建設業法第50条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
 第十一条第一項から第四項まで(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出した者

 実際には、終了届の提出が遅れた場合にすぐ罰則が適用されている訳ではありませんが、遅れて提出した終了届の副本には「事業年度終了届は、決算終了後4ヶ月以内に提出してください」という注意スタンプが押印されます。

 終了届は、管轄の建設事務所で誰でも閲覧出来てしまうので取引先等に見られると会社の印象が悪くなりますし、建設業許可の更新業種追加の手続きを行うにはその前提として終了届が提出されている必要があります。

 ですので終了届は、必ず毎年期限内に提出するようにしてください。更新手続きについては下記記事もご参照ください。

建設業許可の有効期限は?気づいたら切れていた場合の対応方法について

必要書類一覧

 終了届の添付書類は下記の通りです。

事業年度終了届の添付書類

・表紙

・工事経歴書

・直前3年の工事施工金額

・貸借対照表

・損益計算書

・株主資本等変動計算書

・注記表

・事業税納税証明書

・(株式会社の場合のみ)事業報告書

・(法人で変更がある場合のみ)定款又は議事録

・(変更がある場合のみ)健康保険等の加入状況(従業員数の変更の場合のみ)

終了届の提出窓口・問い合わせ先

 また、終了届の提出先や問い合わせ先は主たる営業所の所在地によって異なり、下記の表の通りです。終了届は正・副1部ずつの計2部を提出します。

主たる営業所の所在地所管する建設事務所電話番号
名古屋市の区域都市総務課 建設業・不動産業室
〒460-8501
愛知県名古屋市中区三の丸3-1-2 県庁(自治センター2階)
052-954-6503
瀬戸市、春日井市、小牧市、尾張旭市、豊明市、日進市、清須市、北名古屋市、長久手市、愛知郡及び西春日井郡の区域尾張建設事務所
〒460-0001
愛知県名古屋市中区三の丸2-6-1(三の丸庁舎5階)
052-961-4409
一宮市、犬山市、江南市、稲沢市、岩倉市及び丹羽郡の区域一宮建設事務所
〒491-0053
愛知県一宮市今伊勢町本神戸字立切1-4
0586-72-1465
津島市、愛西市、弥富市、あま市及び海部郡の区域海部建設事務所
〒496-8533
愛知県津島市西柳原町1-14(海部総合庁舎6階)
0567-24-2141
半田市、常滑市、東海市、大府市、知多市及び知多郡の区域知多建設事務所
〒475-0828
愛知県半田市瑞穂町2-2-1
0569-21-3233
岡崎市、西尾市及び額田郡の区域西三河建設事務所
〒444-0860
愛知県岡崎市明大寺本町1-4
(西三河総合庁舎6階)
0564-27-2745
碧南市、刈谷市、安城市、知立市及び高浜市の区域知立建設事務所
〒472-0026
愛知県知立市上重原町蔵福寺124
0566-82-3114
豊田市及びみよし市の区域豊田加茂建設事務所
〒471-0867
愛知県豊田市常盤町3-28
0565-35-9312
新城市及び北設楽郡の区域新城設楽建設事務所
〒441-1354
愛知県新城市片山字西野畑532-1
0536-23-5111
豊橋市、豊川市、蒲郡市及び田原市の区域東三河建設事務所
〒440-0801
愛知県豊橋市今橋町6
0532-52-1312

事業年度終了届の作成方法

 事業年度終了届は、下記サイトより書式をダウンロードして作成します。

愛知県建設業許可の書式ダウンロードページ

書類作成上のポイント

 事業年度終了届の提出書類の中で工事経歴書の書き方が特に重要なので下記で説明します。また、提出書類である決算書類は決算報告書の記載を様式15号~19号に転記して提出します。決算報告書の記載をそのまま丸写しすれば良いのではなく、終了届特有の記載ルールがあるので注意が必要です。

※終了届の提出後に経営事項審査を受ける場合には、工事経歴書や決算報告書の記載も経営事項審査用のルールに従って記載する必要があります。経審用の終了届の作成方法については、「経営事項審査を受ける場合の注意点」の記載を参照ください。

 また、株式会社においては事業報告書という書類の提出が必要です。事業報告書のフォーマットには決まりがありませんので、任意の様式にて提出します。また合わせて提出する必要のある事業税の納税証明書の取得方法を下記にて説明します。

工事経歴書の書き方

 工事経歴書とは、その事業年度に完了した工事のうち請負代金の金額が大きい工事の詳細を届け出る書類になります。請負代金が大きい工事を10件又は年間完成工事高の60%を超えるまで請負代金の大きい順番に記載します。記載例は下記の通りです。

 ①の建設工事の種類には、現在許可を受けている建設工事の種類を書きます。複数の業種の許可を受けている場合には、工事経歴書はその業種ごとに作成します。また、許可を受けていない業種の建設工事を請け負った場合には、「その他」と書いて工事経歴書を作成します。

 ②には、その工事の注文者と元請・下請の別を記載します。その業種につき、その事業年度に請け負った工事がない場合には、注文者の欄に「該当工事なし」と記載します。該当工事がない建設業の業種が複数ある場合には、①の建設工事の種類欄にその業種をまとめて1枚に記載することが出来ます。

 ③には契約書等から工事内容がわかるように具体的に記載します。建設工事の種類が特定できるように記載することがポイントです。②③の注文者や工事名には、「A邸」のように個人の氏名が特定されないように記載します。

 ④には、工事現場のある都道府県と市区町村名を記載します。政令指定都市については区まで記載します。名古屋市の場合は都道府県である県名の記載を省けます。

 ⑤には、配置技術者の氏名とその者が主任技術者か監理技術者かの別を記載します。配置技術者とは、建設業許可業種の工事をする際にその現場に設置が義務付けられる技術者のことです。一般建設業許可の専任技術者が主任技術者、特定建設業許可の専任技術者が監理技術者に該当します。

 ※配置技術者は公共性のある施設・工作物又は多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な建設工事に関しては工事現場ごとに専任の者でなければならないとされています。

 ※「その他工事」を記載する工事経歴書には、配置技術者の欄への記載は不要です。

 ⑥には、請負代金の金額を記載します。千円単位になっているので注意が必要です。

 また⑦には工期を記載します。着工の年月と完成年月を記載します。⑧の小計には、工事経歴書に記載した工事の請負金額の合計額と件数を記載します。また合計欄には、その業種の完成工事の全件数と請負代金の合計額を記載します。小計と合計の右横の欄には、その内元請け工事の合計金額をそれぞれ記載します。

決算書類の記載の仕方

 基本的には税理士作成の決算報告書(貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表)の記載を参考に、書式に数字を入力します。しかし、建設業法特有の勘定科目があるため、適宜建設簿記仕様に修正して作成する必要があります。

 作成にお困りの方は当事務所までご相談ください。

事業報告書の作成方法

 株式会社の場合のみ提出が求められる書類です。愛知県の場合、特にフォーマットの指定はありませんので、適宜自社の事業報告書を作成して提出します。参考までに当事務所で使用しているフォーマットを掲載させて頂きます。

納税証明書の取得方法

 また添付書類として事業税の納税証明書の取得が必要です。納税証明書の取得方法には、(1)最寄りの県税事務所の窓口に行く方法(2)郵送で申請する方法(3)電子で申請する方法の三つがあります。納税証明書の取得手数料は1件400円となっています。

(1)最寄りの県税事務所の窓口に行く方法

事業税の納税証明書は、特に管轄に関係なく県内どこの県税事務所でも取得することが出来ます。事業税は都道府県の税金になりますので、国の出先機関である税務署や市税事務所、市役所の税務課では取得できませんのでご注意ください。

県税事務所一覧

〇名古屋東部県税事務所

所在地 名古屋市中区新栄町2-9(スカイオアシス栄内)

電話番号 052-953-7803

〇名古屋北部県税事務所

所在地 名古屋市西区城西1-9-2

電話番号 052-531-6303

〇名古屋西部県税事務所

所在地 名古屋市中川区中郷1-3

電話番号 052-362-3213

〇名古屋南部県税事務所

所在地 名古屋市熱田区森後町8-22

電話番号 052-682-8922

〇東尾張県税事務所

所在地 春日井市鳥居松町3-65

電話番号 0568-81-3192

〇西尾張県税事務所

所在地 一宮市新生2-21-12

電話番号 0586-45-3168

〇海部徴収課

所在地 津島市西柳原町1-14(海部総合庁舎内)

電話番号 0567-24-2174

〇知多県税事務所

所在地 半田市出口町1-36(知多総合庁舎内)

電話番号 0569-89-8173

〇西三河県税事務所

所在地 岡崎市明大寺本町1-4(西三河総合庁舎内)

電話番号 0564-27-2711

〇安城徴収課

所在地 安城市横山町下毛賀知93(安城県税センター)

電話番号 0566-76-2101

〇豊田加茂県税事務所

所在地 豊田市元城町4-45(豊田加茂総合庁舎内)

電話番号 0565-32-7481

〇東三河県税事務所

所在地 豊橋市八町通5-4(東三河県庁(東三河総合庁舎))

電話番号 0532-35-6123

〇新城駐在室

所在地 新城市字石名号20-1(新城設楽総合庁舎内)

電話番号 0536-23-2393

(2)郵送で申請する方法

 必要書類を愛知県名古屋東部県税事務所に郵送する形で申請します。次の①~⑤の書類を名古屋東部県税事務所宛てで郵送してください。①納税証明書交付申請書②委任状③交付手数料④返信用封筒⑤本人確認書類の写し。詳細は下記サイトをご確認ください。

納税証明書を郵送で申請する場合

(3)電子で申請する方法

 また、令和5年2月15日より電子申請システムを利用してオンラインで納税証明書を請求できるようになりました。手数料はキャッシュレス決済で支払い、納税証明書の受取は郵送となるので窓口で受け取る必要はありません。詳細は下記サイトをご確認ください。

愛知県電子申請・届出システム

経営事項審査を受ける場合の注意点

 また、終了届の提出後に経営事項審査を受ける場合には、一部の書類の作成方法が異なっているので注意が必要です。主に工事経歴書と注記表の記載方法が異なります。また既に終了届を提出してしまっている場合に、経審を受ける場合には提出済みの終了届を経審用に差し替える必要があります。

注意点①工事経歴書の記載方法

 工事経歴書に記載する工事の順番と内容が通常と異なる形になります。具体的には、

①元請の完成工事につき元請工事の全体額の70%以上になるように記載

②次に下請工事と①で記載しなかった元請工事を請負代金の大きい順に完成工事高全体の70%以上になるように記載

③②に続けて主な未成工事を請負代金の額の大きい順に記載

します。請負代金の金額は免税事業者でなければ、全て税抜きで記載する必要があります。

注意点②注記表の記載方法

 経審を受審する場合には、注記表につき下記2点の記載が必要になります。

経審用の注記表の記載箇所

①7貸借対照表関係(2)保証債務、手形遡求債務、重要な係争事件に係る損害賠償義務等の内容及び金額

②8損益計算書関係(5)研究開発費の総額

注意点③既に提出済みの終了届を経審用に差し替える方法

 経営事項審査を受審するにあたり、終了届を既に提出済みで修正が必要となる場合には、修正後の書類(正・副1通ずつ)に加えて下記差替願の提出が必要です。差替願には、差替事項とその内容、理由を記載する必要があります。

経審の手続きの流れについて

 経営事項審査とは、県等が発注する公共工事を元請けとして直接請け負う建設業者が受けなければならない審査のことです。毎事業年度の決算日が審査基準日となり、一度審査を受審すると審査基準日より1年7ヶ月間有効になります。経審の手続きの流れは下記の通りです。

①経審の予約
事業年度終了届の提出時に、提出先で経審の予約を申し出ます。
②経営状況分析申請
登録経営状況分析機関へ経営状況分析申請を行い、経営状況分析結果通知書を取得する。
③経審の受審
①の予約表に記載の期日に、経営事項審査申請書一式と持参書類を会場へ持参又は郵送により送付し、審査官の審査を受けます。不足書類や訂正事項があればその場で指摘され、当日に対応するか、後日に設けられている再審日に訂正書類を持参し対応します。
④経営規模等評価結果通知書、総合評定値通知書の通知
審査日の翌月の月末に結果が郵送にて通知されます。

まとめ

 愛知県建設業許可の事業年度終了届は毎年期限を守って確実に行う必要があります。終了届の添付書類の作成には、専門的な知識や時間・手間が掛かりますので、お早めにご準備されることをお勧めします。また、経営事項審査を受ける場合には、通常と異なった添付書類の作成が必要となるので注意が必要です。

 終了届の作成でお困りの方は当事務所までご相談ください。

お問い合わせページ

投稿者プロフィール

start-up22
start-up22
【スタートアップ行政書士事務所 代表/行政書士】
佐野 太一(さの たいち)

2022年3月開業。愛知県あま市にて行政書士事務所を経営。
専門分野は建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可、補助金申請。